2020年9月アーカイブ
2020年9月30日 18:23 ( )キノア ユニークな栄養と健康促進効果−2
3. 加工特性と食品用途
歴史的にキノアは、ラテンアメリカのヒスパニック以前の人々により広範囲の製品に用いられてきた。キノアの加工は主に全種子の調理で行い、次にスープ、サラダ、いろいろなシチュー、甘いデザートとして消費され、あるいは粉に製粉し幾つかの伝統的加工品(例えばかゆ、平パン)、あるいは発酵してビールタイプのchichaと呼ばれる製品になる。にが味サポニンは水中で洗浄(ヒスパニック以前の人々はこの洗浄水を界面活性剤として利用)するあるいは乾熱処理して種子皮を手でこすり落として除く。最終製品にいいナッツの香りを与えるために、熱調理前に種子を鍋中でローストするのが一般的である。これはまた今日でも推薦され、西欧食のアプリケーションでキノア固有の味を適応あるいは改良するのに使う。
今日キノアの主な利用は調理と直接消費(米の変わり)である。また広範囲の食品製品、朝食セレアル、飲料、パン、パスタ、他のベーカリー製品があり、キノアは一般に普通の穀物粉と混ぜ食品の栄養価を上げる。
3.1一般的加工特性
主にキノアは穀物と同様、多くの食品製品に用いられる。しかしながら食品加工のため、キノアは物理的に機能的性質が穀物とはちがうことを考えねばならないが、主にはそれは擬似穀物の異なった種子形態学(リング胚)とそれらのはっきりした化学組成の違いの結果である。キノアでは非常に小さいデンプン粒とその高アミロペクチン含量(普通少なくとも90%)が、真の穀物に比べより高い粘度、良好な冷凍-解凍安定性、より高い水吸収能、より高い膨潤能に関係する。さらにそのデンプンは穀物より老化しにくい。これらの性質によりキノアは粘り剤として素晴らしい機能がある。
タンパク質に関しては、研究はキノアタンパク質濃縮物あるいは分離物が高度に可溶化し、そして機能性食品(健康促進)に用いる良好な成分である事を示した。タンパク質の可溶性はアルカリ条件下にすると増加する。キノアタンパク質の乳化力と安定性はpearl milletあるいは小麦に比べてより高く、一方起泡能は低いようだ。キノアの分離タンパク質は抽出条件に基づくが保水能2.8-4.5mL水/gで、これは分離大豆に似ている。
最大の制限は食品加工にあり、キノアは小麦の様なグルテンが無いためドウ形成あるいはベーキングに制限が生じる。パンやベーカリー製品の製造のため、キノア粉にはさらに粉の添加や加工条件の変更なしではありえない。しかしながらある量までの小麦ベース製品には加えることができ、それは製品の栄養的性質の改良を行う。
3.2 製粉加工
デンプン性の種子の製粉と分画は重要なステップであり、最終製品品質に影響を与える、というのは殆どの穀物食品製品は全種子粒からは作られず、粉あるいは粉区分から作られるからである。製粉は乾燥か湿製粉加工で行われる。乾燥製粉の目的は、第一に全粒粉を作るかあるいは粉を物理的分画技術(例えば粉砕、ふるう、分ける)で組織的部分に分ける、即ちデンプン-リッチ内胚乳(キノア中の子乳)を外層(ふすま、胚)から分けることである。湿製粉は粒を化学成分に分けるのに用いられ、即ちデンプン、タンパク質(濃縮物、分離物)、食物繊維、そして油脂である。
キノアからの全粒粉の生産は十分に記載されていて、特別の問題はなく、そこには全て既知のプロセスが用いられる。しかしながらで異なった化学成分と物理的性質をもつ粉区分の生産は乾燥分画技術で行う事は非常に挑戦的であり、主にはそれは小種子サイズと異なった種子形態(リング内胚乳)によるためである。いろいろな製粉あるいは分画技術(パイロットスケールで)でキノアからデンプン-リッチおよびタンパク質リッチ粉区分を得る研究がいくらかの研究者で行われ、例えばローラーミリングとプランシフチングとがSchoenlechner et al., (2008)により行われた。研磨製粉はこのような小さな種子から粉区分を作るのに有効な様である。またサポニン含量を低下するのによく応用されるが、それはより高い部分がより外側層中に位置するためである。それとは別に、サポニンは洗浄で除去される。もしサポニンが製粉前に洗浄するなら全キノア粉は外皮を含むが、あるいはもしサポニンが研磨で除去されれば、少しあるいは全くの外皮を含まないようになる。
湿製粉は主にデンプン、タンパク質あるいは食物繊維を分離するように用いられ、其の後の食品適応に用いられる。典型的な湿製粉法には次のステップが含まれる:(1)粒の洗浄、(2)水溶液(しばしばアルカリが入る)中に浸ける、(3)数々の製粉ステップ、(4)濾過/ふるい(主には胚と繊維除去を)、(5)デンプンとタンパク質の遠心分離による分離(主にはラボラトリースケールの仕事で)、あるいはテーブル法により(希デンプン乳を傾斜した長い板上に流して沈殿)、あるいは液体サイクロン(工場スケール)で集める。タンパク質区分(軽い区分)は次に濃縮し脱水する。デンプン懸濁液は洗浄し濃縮する。述べた2分離技術は、デンプンをタンパク質間の比重相違に基づいて分ける。
キノアの湿製粉は幾人かの研究者で研究された。浸漬液(アルカリ、酸、あるいは水)はプロセスに大きな影響のあることが示された。酵素処理(キシラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ)は、分離により効果的であった。Gonzalez-Roberto et al., (2016) は、キノア粒の水浸漬条件として乳酸の入った硫酸溶液が最も良いといっている。Pouvreau et al., (2014) は、サポニン含量を低下するためキノア加工の方法にアルカリ剤を含むか、またあるいはまた種子をコートするのにリパーゼ、プロテアーゼあるいはまたエステラーゼ酵素調製がいいと述べた。
キノアから確定した製粉区分、あるいは分離(あるいは濃縮した)成分を得るため、完全に進んだ乾燥および湿製粉処理の研究は特に結果的に産業レベルまでスケールを上げるまで進めねばならない。
3.3 食品利用
朝食セレアル、セレアル飲料(大豆飲料に似ている)、及びエクストルードスナックフードは、キノアからの製品例であり、それはマーケット上に見られる。それらは一般の穀物に比べ、加工条件の上で大きな違いは必要ない。キノアのエクストルージョンクッキングによる加工については;しかしながら、高脂質、低アミロース含量のためのキノアデンプン粒の混乱を破るために非常に高い剪断力が必要である。ベーカリー製品、例えばクッキー(ビスケット)はグルテンがなくても100%キノア粉で大きな困難さ無く焼けることが、Schoenlechner et al., (2006)によるトライアルで示された。Wang et
al., (2015) は小麦とキノアをいろいろな比率でブレンドしてクッキーを焼いた。クッキーの抗酸化活性はキノア粉の含有で増加し、過酸化物価は室温貯蔵後小麦だけのクッキーに比べ低下した。
豆乳と類似の飲料がキノア粉のホットマッシング法で、あるいはドラム乾燥法によってできた。Pineli et
al., (2015) は、キノアが近年のミルク代替食品に置き換わる新規代替品を作り、それらはヒトに既知の有害効果を与えず、タンパク質含量を増加し、低グリセミックインデックス(GI)を与えるものであることを述べた。キノア飲料は、学校入学前の子供あるいは乳児の健康的オプション(選択)であるとされ、それらは価値ある栄養素源、例えばタンパク質、ビタミンE、チアミン(ビタミンB1)、鉄、亜鉛、マグネシウムである。Repo-Carrosco
et al., (2003) はキノアやkaniwa ( C.pallidicaule) は離乳食ミックスに用いられると述べた。それらは2つの食物の混合物、キノアーkaniwa-豆、キノアーkiwicha豆であり、両者ともに高栄養価があり;混合物のタンパク質価比(PER)値はカゼイン(2.5)のそれに比べ夫々2.36と2.59である。
製パンに用いられる時、キノア中にグルテンがないことは大きな挑戦が必要である。小麦ドウへのキノア添加、特に高含量では、入れられるとドウの性質が変わり、最終製品の品質が変わる。これらの変化には、増加したドウ量、シットリしたドウ、発酵耐性の低下、低容積、緊張して非弾性クラム, さらにいろいろなフレーバー変化を含む。伝統的な製パン性は高量のキノア(20%以上)が入る時に適応されねばならない。主な小麦パンへのキノア添加の目的は最終製品の栄養的品質の増加である。しかしながらまた変わることはキノア添加後、パン中のフィチン酸塩塩の含量は明らかに増加する(Bilgicli and Ibanoglu 2015; Iglesias-Puig et al., 2015)が、それは結果的にはミネラルの様な栄養価の生理学的利用性の低下である。Iglesias-Puig et al.,(2015) によると、この効果は簡単に外部からのビフィズス菌のフィターゼの応用で避けることが出来る。発芽種子からの粉の利用は、ベーカリー製品中のフィチン酸塩含量を最少にすることが出来た。もしキノアの製パン性への含有目的が、タンパク質含量増加と品質増加のためならば、分離タンパク質は最終製品の品質悪化を避けるために好ましい。キノアから/またはキノア添加によるパン品質改良のもう1つの可能性は、サワードウ発酵の応用である。キノアはアマランス粉同様、いろいろな品種のLactobacillus (Coda et
al., 2010; Dallagnol et al.,
2015; Houben et al., 2010; Jekle et al., 2010) の発酵に適していることが判った。
3.4 グルテンーフリー食品
グルテンフリー加工の目的は、グルテンの機能性(パンの3次元ネットワークの形成、パスタの会合、弾性等)を他の手段、例えば特別の成分の利用あるいは加工条件を用いることに置き換えることである。しかしながらグルテンフリー食で重要なことは、単にすベてのグルテン含有成分(例えば小麦、ライ麦、大麦、他の亜種、可能ならオート麦)や、グルテン含有食品の除去するだけではなく、また不足している栄養素を補充することもあり、特に腸管吸収が未だ障害のある時にはそうである。こうしてグルテンを除去するのと同様、十分な栄養分適切さを確かめることが大切であり、グルテン不耐性に苦しむヒトの食事人生に結びつけるためには必要である。最近までのグルテンフリー加工は狭い範囲の原料に基づいており、主に米とトウモロコシであった。その結果は低栄養品質(高エネルギー濃度、しかし低ビタミン、ミネラル、極小エレメント、食物繊維、植物化学物質)、それと低官能品質であり、特にパンでそうである。グルテンフリー製品の生産へのチャレンジは、こうして官能品質とともに栄養的品質改良をすることであった。これを考えて、キノアは高品質グルテンフリー食品の開発に非常に高い可能性がある。
Alvarez-Jubete et al., (2010)
は、アマランス、キノア、ソバのベーキング適性を米とそれぞれをブレンド(50:50)し、標準的グルテンーフリーパン(米粉とポテトデンプン50:50)と比較した。彼らは、擬似穀物がグルテンフリーパン仕込みに使われ、クラムソフトネスと凝集性を強め、そのときパンの他の官能的性質には、悪影響を与えることのないことを述べた。アマランス、キノア、ソバのグルテン-フリーパスタ生産への利用はSchoenlechner et al., (2010a) により研究された。これらの著者は、パスタがアマランスから出来る時には固さのテクスチュアを減らし、クッキング時間を低下する、一方キノアからのパスタでは主にクッキングロスの増加を示すことを見出した。ソバパスタではネガテブ効果は最少であった。3種全ての擬似穀物のコンビネーション、60%ソバ、20%アマランス、20%キノアの比率で1つの粉にして、ドウマトリックスは改良された。ドウの水分は低下された(小麦パスタ中の34.5%に対し30%までとする)。分離タンパク質の添加(最も良いのは卵アルブミン)は、パスタの堅さを改良するのに最大の効果があった。グルテンフリーパスタ生産用にデンプンの役割とその性質が重要である。デンプンの老化に関係する現象は、製品の最終テクスチュアの中心的役割を演ずることが見出された。こうしてパスタ製造技術には、前もって糊化した粉の利用あるいはドウ、あるいは異なった温度域の応用を用い、多くの関心が向けられた。両方からの接近はグルテンフリーパスタ品質の改良が約束されるようだ。
4. キノア食品製品の栄養的、健康促進的性質
いかなる食品にとっても、単なる材料の化学組成や、重要な栄養素のあるレベルの存在のみならず、またそれらの最終食品製品内における生理的性質(例えば生化学的利用性、消化性、あるいは加工後の栄養素の保持性)も重要である。これまでのセクション中でアウトラインしたように、キノアには特別の栄養的成分があるが、しかしまたその生理的性質も興味深いものである。
タンパク質の関して、不可欠アミノ酸の高含量とともに高い生化学値があり、キノアはまた高消化性のあることも知られる。材料キノアのvitroでの消化性は76.3%-80.5%である。これは脱皮あるいは洗浄(サポニン除去)で83%-84%まで増加する、あるいは調理では95%まで上がる。In vivoで食餌実験では92%の消化性が示された。タンパク質の消化性は、トリプシンインヒビターで低下した。しかしながら、事実、トリプシンインヒビター活性はキノアでは低い(1.36-5.04トリプシンインヒビター単位(TIU)/mLサンプル)。阻害活性は加熱処理、洗浄、あるいは脱皮でさらに低下した。
キノアのデンプン消化性とGIに関して、残念ならがら利用できる研究データーは矛盾している。キノアは高含量のD-キシロースとマルトース、低含量のグルコートとフラクトースであり、低GIであると述べられてきたが、それは糖尿病者にとり都合のよいものであろう。またBerti et al., (2005) によると、彼らはin vitroおよびin vivoの研究でデンプン分解性とグリセミックレスポンスを決め、キノアはより低いGIの可能性のあることを示したが、しかし著者らはさらにより大きな研究がその血糖効果作用を決めるのには必要であると考えた。一方、Wolter et
al., (2014) は、擬似穀物のデンプン消化性にはっきりした相違を見出し、アマランスとキノアに対し高GIを予測した。アマランスの研究で、Capriles et al., (2008) は特別の擬似穀物の特徴(炭水化物のタイプに加えてデンプン粒のサイズとその分子配列)がGI値に影響することを述べた。この意味で、アマランス種子は高血糖食品であると示され、多分その小さいデンプン粒サイズ、低抵抗性デンプン含量、および結晶の完全消失の傾向、および加工(加熱処理)中にデンプン粒構造の完全な消失傾向があるためである。類似のデンプンの性質がアマランスとキノアにあるために、これらの仮定はキノアでも真実であろう。Wolter et
al., (2013) は、最も高い予測GIを他のグルテンフリーパンに比べグルテンフリーキノアパンで見出し、結論としたのはキノア中のより小さいデンプン粒直径(1.3μm)がより高いGIにするとした。
抵抗性デンプン(RS)は幾つかのはっきりした健康価値(例えば大腸がん阻害、血清コレステロール低下、トリグリセリド低下)があり、さらに最終製品のGIに影響を与え、ある加工方法によりキノアに増加させる。Linsberger-Martin et al.,(2012)による研究では、キノアデンプンの静水圧処理は約18倍のファクターでRS含量の強化をする。この処理粉は、パンの様なグルテンフリー製品での機能的成分として働くことが出来る。
食物繊維含量と成分は、加工により大きく影響される。エクストルージョンクッキング後、全食物繊維含量、特に不溶性区分はキノアでは減り、一方可溶性食物繊維区分は増加する。この変化は、また他の研究者によっても一般穀物で発見された。さらに恐らく剪断応力と高温度にさらされた結果であり、それはエクストルージョンクッキングパラメーターによる化学結合の破壊をおこし、可溶性小粒子を生成したものである。Ruales and Nair (1994)の初期の研究で、キノア全食物繊維含量は調理により減り、そしてある可溶性繊維は調理やオートクレーブでなくなることがわかったが、多分それは繊維成分の解重合のためである。キノア粉の生理的効果はKonishi et
al., (2000)により研究された。3%キノア果皮の入った食餌は、マウス中で明らかに血清、肝臓コレステロールレベルを低下した。このキノア果皮の低コレステロール血症効果は、ほぼ多分水溶性食物繊維含量によるもので、これはオート麦のような他の繊維に類似のものである。
微量栄養素に関しては、キノアは非常に高レベルの葉酸がある。
ビタミン類は一群の栄養素で非常に加工効果に影響される(温度および水の効果)、そして簡単に量的に低下するかあるいはなくなる。
葉酸は不安定なビタミンの1つで、貯蔵あるいは加工後平均して損失は35%と70%の間である。擬似穀物中の葉酸の研究では、Schoenlechner et al., (2010b)はいくつかの主食(パン,パスタ、クッキー)を擬似穀物(アマランス、キノア、ソバ)で作り、3ヶ月保存しその食品と粉中の全葉酸含量と損失を求めた。貯蔵後、粉中の全葉酸の平均損失は34%、パンで 51%、ヌードルで24%、クッキーで16%であった。これらのロスにもかかわらず全葉酸含量は17-98μg/100g dmヌードル、18-62μg/100g
dmクッキー、26-41μg/100g dmパンであった。キノア食品は最も高い葉酸含量であった。データーは食品製品が擬似穀物(特にアマランスとキノア)で作られる時の葉酸の実質的供給レベルを支えるものである。
これまで示したように、キノア中のミネラルは主に種子の外側層に位置している。サポニンの除去(機械的あるいは洗浄で)では、キノア中のミネラル含量が大きく減る(例えば46%のKが損失)。
さらにフィチン酸塩はミネラル生理的利用性に悪影響を持ち、それは不溶性複合体を形成のためでヒトの消化等で吸収出来ない。Omary et
al., (2012)によると、発芽中の擬似穀物は、栄養素含量、ビタミン、ミネラル、全ポリフェノール、抗酸化活性の改良をし、一方、抗栄養素は低下する。こうして発芽したグルテンフリー穀物および擬似穀物は、グルテンフリー食品の防備と強化の天然物手段として大きな可能性がある。しかしながらそれらの混入は製品のテクスチャ、味に影響するため、これからの更なる研究が必要である。
さらにこれらの生理的性質に加えて、幾つかの研究がキノア製品の特異的健康効果を示した。キノアのコレステロール低下活性がPasko et
al., (2010)とDe Carvalho et al., 2014の研究で示された。前向きおよび二重盲検調査研究を体重超過女性に対し4週間行い、25gキノアフレーク消費は顕著に血清トリグリセリドと全コレステロール、さらに低密度リポ蛋白質(LDL)-コレステロールの低下を示した。マウスの食餌試験で、Foucault et al., (2014) は、キノア食はエネルギー消費が増加し、そしてグルコースの酸化的代謝が進められ、脂質生成の阻害、脂肪組織中の脂質蓄積の低下が進む事を見出した。
キノアの抗酸化能は、in vivo試験でキノア抽出物(80%メタノールで調製)をRhizopus
oligosporus で発酵して証明された。重要な抗酸化酵素の活性増加に与えるプラスの影響は、血漿サンプル中の脂質過酸化パラメーターの低下同様に、赤血球、幾つかの異なった組織(心臓、腎臓、肝臓、脳)中で見出された。また他の研究でも、キノアが高フラクトース食を与えられた動物食餌で抗酸化活性を示し、酸化的代謝ストレスを引き起こす事を示した。
Gimenez-Bastida et al., (2016) は、ある擬似穀物を含む普通の食べ物にはコレステロール低下作用、抗酸化性、抗ガン活性、血糖レベル低下、高血圧食事と貧血条件の改良の効果があると結論した。彼らのレビューによると、食物繊維だけでは全粒のより多くの摂取間の頻繁の結合の完全な説明、および観察研究での病気の危険性の低下した説明にはならない。彼らはさらなる研究が疫学研究に向けられ、作用メカニズムの理解のために特にヒトの体に向けれねばならないと提案した。
5. 結論
上等な栄養素組成、加工性質、示された健康価値で、キノアは実に高度の栄養成分である。それが長い間無視されたあと、キノアは20世紀中/後期に"再発見された"のであるが、しかし未だキノアが密接な関心を呼ぶまで二−三十年かかると見られる。2000年来、マーケット上のキノアの食品製品の増加が世界中で広く見られる。この主な理由はグルテンフリーの状態にあるためだが、またカナダ、米国、日本、オーストラリア、ヨーロッパの様な国々の一般的な人々の間で、アンデス穀物は一般の消費者によってますます受け入れられている。キノアの生産と貿易のシステムはアンデス地域では重大な変化を経験したが、伝統的作物からのシフトを反映して、まず第一に自分達のための生産から国際的貿易商品へとシフトした。大きくなる国際的要望とボリビア、ペルーからの急成長する輸出は小規模生産者に恩恵を与えたが、しかしマーケットのダイナミックスが変化するに連れて新たな課題が発生する。大きな関心はキノア(2008年以後特に)の価格の大きな増加であり、それは大きく地方のマーケットや消費者に影響した。貧しい家庭はキノアをもっとやすいものに置き換え、しかし栄養的には劣った食品製品、例えば米、パン、パスタである。
キノア"再発見"の時期の最初の研究は、農業面と幾つかの初歩的な化学的特徴研究に向けられたが、未だ多くの領域で知識の欠ける事がある。しかしながらキノアの興味が増大するに伴ってキノアへの研究努力は今や大きくなっている。今日、研究は全てのエリア、基本的な化学、生理的性質を使って栽培、育種問題から、そして健康促進性質に関して詳細なデーターを得るためin vivo、臨床研究に広がる。このような包括的接近だけで、キノアの高い可能性を完全に明らかにする事ができ、世界中の全ての国々の人々に価値を提供することが出来る。
キノア ユニークな栄養と健康促進効果−1
1. 紹介
キノア (Chenopodium
quinoa Willd.) の起源は南アメリカのアンデス地域と考えられている。数品種は約7000年間プレヒスパニック人によって育てられた。アンデス地域で最も古い作物の1つと考えられる。植物学的にはキノアは双子葉植物類に入る。いくつかの植物遺伝子分類によるとChenopoduim
遺伝子はCaryophyllalesに入る。甘い、苦いの両方がキノア品種に存在する。分類はサポニン含量の違いによる。もしサポニン含量が0.11%以下ならばその品種は甘い品種と考えられる。C.
quinoaは、1年生のイネ科の植物であり、典型的には0.5-1.5 m高に達し、しかしアンデス間渓谷では2.5m高までになる。種子はシリンダー状--レンズ状の形状で約1.5-2.5mmであり、約1.9-4.3 gの千粒重の値である。内胚乳は2つの子葉からなり、基礎組織で囲まれている。デンプン貯蔵は主に胚乳中に蓄えられ、一方、脂質とタンパク質は内胚乳と胚組織中の細胞中に貯まっているが、そこにはフィチン、リン酸、K, Mgのほぼ球状の結晶とフィトフェリチンを含む前色素体(prosplastids)をも含む。胚乳は4層を持ち、外側層はサポニン(にが味のある化学成分;ステロイドのグルコサイド、ステロイドアルカロイド、 あるいはトリテルペン)に富む。キノアは非常に多様であり、多くの異なった種類があり、白から黄色、赤、黒の遺伝子タイプがある。異なった農業生態学的条件下にも十分対応し、他の植物タンパク質源が利用しない地域ですら生産することが出来る。
キノアはKaniwa
(Chenopodium pallidicaule,
Aellen)や他の可食性植物、例えばアマランス(kiwicha-Amaranthus
caudatus, Linn)同様大きくアンデスの住民により消費され、当時、他の唯一利用出来る穀物、トウモロコシの様に主食であった。長い間放置された後、それらはあるアンデスの谷間でのみ育ってきたが、これらの植物は20世紀半ばから後半に西欧諸国によって"再発見"され、そして2000年来、キノアを利用したもの、そしてそれを含むモノがかなり食品製品としてマーケット上に増加して来た。
この新規興味に対する主な理由は次の二つが重要な要因として関係している;(1)キノアには上等な栄養成分があり、タンパク質と脂質の高品質、高含量と高含量のミネラル、更にいくらかのビタミン類がある。
デンプン粒は知られたもののうち最も小さいものであり、アミロース含量は非常に低いのでキノアはユニークな物理化学的性質をもつ;(2)キノアはグルテンーフリーであり、グルテン不耐性で苦しむ人々により消費することが出来る。一般にグルテンフリー食品の要望への増加は、特により栄養価の高いグルテンフリー製品への要望増加は、これまでずっと(今でも)西欧諸国でキノアの利用の増加に対する最も重要な原動力になっている。グルテンフリー食品を必要とするヒトの数を考慮すると、マーケットは全人口の8-10%にまで達すると計算される。
キノアへの世界の要望の増加は、その生産の非常に大きな増加と成る。2014年192,506トンのキノアは平均収穫0.8t/haが世界規模の生産である。これは過去10年ほぼ4倍の生産増加である。主生産国はペルー、ボリビアで両方で世界生産の90%以上であり、そしてエクアドル、今日は、アンデス全域に生育しコロンビアから北アルゼンチン、チリと、もっと多くの国々と地域でも、例えばUSA、カナダ、イタリア、フランス、英国、スエーデン、デンマーク、オランダ、インド、さらにアフリカ諸国のいくつかの国々である。ペルー、ボリビアで生産された殆どのキノアは輸出され、特にヨーロッパ、アメリカがメインの輸入者で有る。2011年以来、ボリヴィアは全キノア生産のほぼ半分を輸出している。ペルーはキノア生産域だが、生産/ヘクタール(今日1.6t/haまで)が非常に大きく増加すると同様、その輸出は2007年より少しずつ増加し、2012年には生産の23.2%にまで達した。
この章ではキノアの化学栄養成分(タンパク質、アミノ酸、脂質成分、炭水化物、食物繊維、微量栄養素も含め)、加えて抗栄養素、と生理活性物質の詳しい情報を示す。またまとめとして、加工と応用食品の現在の知見、特にグルテンフリー食品の関係あるものを含めた。最終的セクションで栄養的健康増進のキノア食品製品の性質を述べる。
2. 化学成分と栄養関連
述べたように、近年キノアがこのように大きく興味を引かれる主な理由の1つは、グルテンーフリーであることと上等な栄養的性質であることだ。キノアの成分は明確の様であり、しかしもっと重要なことはその大部分の成分は時に上等な品質を持っていることだ。
2.1 タンパク質とアミノ酸
キノアのタンパク質含量は穀物に類似しているが、穀物と比べてキノアのタンパク質は非常に高品質で、豆タンパク質によく比較される。平均タンパク質含量は13-15%(で、異なる新種の中では8-22%までの変化がある。キノアは非常に高含量の(不可欠)必須アミノ酸、例えばリジン、アルギニン、トリプトファン、SH含有アミノ酸を含む。キノアにおける制限不可欠アミノ酸に関する結果には矛盾があり、それはひょっとしたら研究した品種、あるには分析法の違いによるためであろう。
WHO (2002)によると、キノアのバランスのとれたアミノ酸組成は、ヒト食事のFAO/WHO要求の最適タンパク質参考パターンに近いものであり、わずかイソロイシンとバリンのみ多少制限があるが、一方Ruales et
al., (2002)による研究では1次制限アミノ酸はチロシン、フェニルアラニン続いてリジン、スレオニンであるとわかっている。キノアで利用される全タンパク質は67.7-75.7とわかり、生化学的値は71.1-82.6であり、両方とも穀物に比べ明らかに良好で有る。
また穀物との違いは、キノアの主貯蔵タンパク質はグロブリンとアルブミンであり、ともにそれらは全タンパク質の80%までと測定される。他のユニークなキノア種子の属性は(またアマランス種子も)、第2アルブミン区分であり、それは大きくグロブリン、アルブミンを抽出後に水で分離されるものである。プロラミンは非常にわずかに存在する。更に穀物との対照としてキノアプロラミンは低含量のプロリンで特徴づけられる。
免疫学的にWestern blotあるいはELISAテストから、キノアタンパク質はセリアック病に苦しむヒトには毒性はない。臨床試験研究から、19セリアック病患者は6週間キノア50gを毎日食べ、キノアには十分耐えられたとはっきり断言した。
2.2 油脂成分
キノア中の脂質量は小麦の約4倍ほど高く, その範囲は4.0%から9.7%である。脂質の品質は非常に高く、ポリ不飽和インデックス(Pufa/SFA, 総多価不飽和脂肪酸/総飽和脂肪酸)は3.7-4.9である。不飽和脂肪酸の含量は全脂肪酸量中約82.7%-85.0%であった。キノア中、主脂肪酸はリノール酸(50%以上)、オレイン酸(20%以上)、パルミチン酸(8%)である。更にオレイン酸、α-リノレイン酸を含む。
極性脂質は全脂肪酸含量のうち約25.2%で、リゾフォスファチジルエタノールアミン(LPE)が43.2%で大部分であった。
2.3 炭水化物(デンプンと糖)
デンプンはキノア中の大部分のグリセミック炭水化物で穀物と同じである。これはキノアをデンプンベース製品として用いて有効である。穀類に比較して見ると、デンプンは内胚乳に貯蔵されるが、キノアではデンプンは外胚乳に貯蔵される。デンプン粒はキノアでは多形で、非常に小さく直径は約1.0-2.5μmであり、アマランスのデンプン粒よりわずかに大きい唯一のものである(平均1μm)。それらは各粒として、あるいは多数の粒の集まりとして認められ、数百の各粒による大きな集団粒である。更にキノアデンプンは、アミロースの低含量で特徴づけられ(普通10%以下)、しかし4%と20%の間の変化がある)。この異なった成分のためキノアデンプンは比較的低いが広い糊化温度域(57-71 ℃)を示すが、それはアミロース含量による(アミロース含量がより高いほど、糊化温度は低くなる)、そして高い糊化粘度になる。また低アミロース含量に関係して、強い冷凍--解凍の安定性がキノアデンプンにはあり、老化に対する抵抗性もある。
単純糖含量は普通の穀物よりキノア中には高く、種類によっては明らかにばらつきが大きい。Jacobsen et al.,(2003)によるとこれは凍結耐性と関係あるという。Altiplanoからの品種は谷からのものよりキノアの糖含量が高い。Repo-Carrasco(1992)は、キノアの遊離糖含量は6.20%と報告した。次の糖とオリゴ糖はGross et
al., (1989)により見出された;フラクトース、グルコース、シュクロース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコースとα-ガラクトシドである。ショ糖が主な糖で2.79g/100g乾物の含量である。Ogungbenle
(2003)によると、キノア粉はD-キシロース(120.0mg/100gサンプル)とマルトース(101.0mg/100gサンプル)の高含量、グルコース(19.0mg/100gサンプル)とフラクトース(19.6mg/100gサンプル)の低含量を含む。
2.4 食物繊維
キノア中の食物繊維含量は穀物類のそれと似ているが、種と品種の間に大きな違いがあり、それはまた真の穀物では一般的である。これは環境条件、例えば土壌の栄養状態、水利、あるいは遺伝的タイプと環境の様なものによるだろう。他の理由は種子のハンドリングや加工によって異なる。サポニンの除去は繊維含量を低下することが知られる。ここである著者らはキノアで比較的食物繊維含量が低いことを報告し、一方他のものは高い含量を見出している。7.8%-14%のレベル。La Mothe et al., (2015)は、全食物繊維含量がキノア中10%と求め、そのうち78%は不溶性であるとした。不溶性繊維(IDF)は主にガラクチュロン酸、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコースが成分である。キノア中の溶性繊維の比率(ほぼ22%)は殆どの一般的穀物より高く、主にグルコース、ガラクチュロン酸、アラビノースからなる。
キノア中の食物繊維の成分は、穀物より果物、野菜、豆類種子に似ていて、それは有益な結腸機能のよい可能性を秘めているかもしれない。しかしこの点に関してはより研究が必要である。
2.5 微量栄養素--ミネラルとビタミン
キノアの微量栄養素、ビタミン、ミネラルの高含量は、キノアを上等な栄養源にする様相の1つである。キノア中の全ミネラル含量(灰分)は穀物中の約2倍で、特にカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛が多い。ミネラル、例えばカリ、マグネシウムのようなものは内胚乳中にあり、一方カルシウム、リン酸は果皮の細胞壁ペクチン成分と結びついている。
ビタミン、カロチン、リボフラビン(ビタミンB2)、トコフェロール(ビタミンE)、葉酸に関しては豊富である。トコフェロール、アルファートコフェロール、ガンマートコフェロール、べータートコフェロールに関してはキノア中の大部分のものである。大きく印象的なのはキノア中の葉酸含量であり、世界の人々の大部分に欠けているビタミンである(全ての国々、地球の南側同様、地球の北側も)。Schoenlechner et al., (2010b) は、これらの擬似穀物、アマランス、キノア、ソバ中の全葉酸含量を4穀物類と比較すると、アマランス中の葉酸含量は穀物中のモノは約4倍高く、キノアでは10倍まで高いことが判った。あるキノア種は約265μg/100gほどの含量である。ソバ中のみ葉酸は真の穀物の範囲である。毎日の摂取推薦量は葉酸で300μgで、キノアははっきりした葉酸の高い供給源と考えられる。
2.6 生理活性物質
フェノール化合物、それは植物中に存在する植物化学物質であり、抗酸化能に関係し健康価値を与えるが、キノアに存在するがしかしその量は穀物中でもより低い値である。再び、種間のレベルには大きなばらつきがあり、そのレベルはまた成長条件にもよっている。Miranda et
al., (2010)、 Pasko et
al., (2009)、Repo-Carrasco and Astuahuaman (2011)によると、全フェノール化合物は各キノア品種で1.59から3.74 mg gallic acid等量(GAE)/100gである。キノア中全ポリフェノールに対するデーターの比較は、用いる分析法の違いのよって異なり、特にポリフェノール抽出法によって異なる。Pasko et
al., (2009)は2段階抽出法を用い、初めはメタノールで続いてアセトンで抽出し、全ポリフェノール(3.75mg GAE/g)のより高い量を見出し、それはRepo-Carrasco
and Astuahuaman (2011)のメタノールだけの方法(1.59mg GAE/100g)よりも高かった。ここで幾つかのポリフェノールは後者の著者らによる抽出方法には含まれない。Yawadio Nshimba et al., (2008) はキノアとアマランス(Amaranthus
hypochondriacus and Amaranthus cruentus)中の全フェノール化合物を分析し、94.3と14.8 mg tannin acid equv./g.のレベルの間を見出した。著者の仕事(2016データーは未出版)では全フェノール(TP)はmgフェルラ酸(FA)等量/100g demで決められた。白,赤,黒の6キノア品種のTP含量は、93~279 mg FA等量/100 g dmが求められた。白品種は黒品種より顕著に低いTP含量であった。白品種中、結合フェノールの比率は明らかに遊離フェノールよりも低く、黒品種ではその比率は反対である。キノア種子の発芽の間、全フェノール含量は増加する。
キノア中のフェノール化合物の組成はRepo-Carrasco et al., (2010)により研究された。彼らはcaffeic acis (カフェイン酸)、フェルラ酸、p-coumaric acid, p-hydroxy-benzoic
acidとvanillic acidを調べた。しかしながら普通穀物に比べて、キノアは一般にフェノール酸が低かった。フェノール酸組成は前述の6種のキノアタイプ(白、赤、黒)では大きな違いがあった。フェルラ酸は全ての品種で決められた唯一のものであり、それらのどれもにgallic acid あるいはsalicylic acidは含まれてない。
フラボノイドはキノア中に多くあり、主にはflavonols kaempferol とquerrcetinのグルコシドからなる。Repo-Carrasco et
al., (2010)は、あるキノア種中にmyricetin とisorhamnetinを見出し、Vega-Galvez et al., (2010) はイソフラボン特にdeidzeinとgenisteinを見出した。
2.7 サポニンとフィチン酸塩
これらの生理活性物質とは別に、キノアはかなりの量の苦みのサポニンを含み、それは一般には抗栄養物質と考えられる。しかしながら低濃度ではそれらは健康促進作用を示すが、コレステロール低下作用、 抗炎症作用、 抗がん性あるいは免疫刺激、及び抗酸化効果である。キノア(全種子)は、0.03--2.05%の苦みサポニンを含む、しかしこれらの値は未だ大豆中の値より低い。キノアでは、サポニンはoleanic acid と他3種のsaponenolsからなり、それらはhederagenin、phytolaccagenic acid、deoxyphytolaccagenic
acidである。光学および電子顕微鏡を化学法と結びつけて、サポニン体をキノア果皮細胞中に同定した。グロボイド型のサポニンボデーは約6.5μm直径あり、4-5個の小粒の会合体である(2.2μm直径)。
約34%のサポニンは外皮中に存在する。
脱皮、洗浄で72%まで含量は低下する。加工はまたサポニンを破壊するが、含量の低下は洗浄や脱皮後ほどは大きくない。別の方法でキノア種子中のサポニン含量の低下は、所謂甘いキノア品種(低サポニン含量)の生育による。Mastebroek et al., (2000)はいろいろな品種のサポニン含量を調べ、苦い品種中では0.47-1.13%に比べて、甘い品種ではわずか0.02-0.04%サポニンが見出された。Koziol(1991)によると、サポニン含量が0.11%以下だとその品種は甘い品種だと考えられる。
フィチン酸は全ての品種の全粒中に一般に存在する。フィチン酸塩は、抗酸化性、心臓病阻止、抗ガン作用等に好ましい効果が報告されているが、またタンパク質、ミネラル、微量要素、例えばCa, Mg, Zn, Cu、Feの生理的利用性を低下する事もよく知られる。キノア種子の発芽と幾つかの加工方法は、フィチン酸塩含量の低下することが出来る。キノア種子で報告されているフィチン酸塩含量は9.3-20.3μmolesフィチン酸/gの広いバリエーションであり、主には粒の内胚乳細胞のタンパク体中に存在し、それは全フィチン酸塩の約60%である。
Millets (ヒエ):ユニークな栄養、健康増進の性質-3
6.
ヒエ食品製品の健康促進的性質
ヒエ食品の重要な健康増進効果は、抗糖尿病、抗炎症性、循環器疾患病(CVD)阻止、プレバイオテックとプロバイオテック効果に整理することが出来る。
6.1 抗糖尿病関連効果
大きな関心事はヒエ食品が低GIで糖尿病を防げるかどうかである。殆どの研究はインドのfinger milletで進められたが、その国では効果に対して非常に強い文化的信念がある。残念な事にShobana et al.,
(2013)によるレビューによると、仕事の多くは続けられたが実験的に欠点があり、例えばGI研究のプロトコールである。ここでは唯一明らかにうまくデザインされた研究がレビューされている。これらは逆の結果であった。
わかった事はfinger milletと精製コムギでつくった合成粉ヌードルは、健康な若い女性成人が消費した時、精製小麦粉のヌードル(63)より低いGI(45)であった。
同様にfinger millet--コムギ合成パンは健康な被験者によって消費されコムギパン(63)にくらべ、低いGI(41-43)であった。対照として、非インシュリン依存性糖尿病患者はfinger millet、 米、モロコシで作ったロチ(平パン)とダンペリングを食べる時、finger milletロチ、ダンプリングは一般に他の穀物でつくったものより高い血糖反応を与える。他の研究では、小麦、脱皮finger millet、米のポン膨張菓子で作ったかゆを健全者に与えると、小麦かゆは遥かに低いGI(55±9)であり、fingerかゆは93±7で米製品のそれよりほんの僅かに低い値だった。
ある研究者はまたfoxtail
millet 製品は低GIを示した。例えば健康被験者は、finger
millet-小麦合成ビスケットは多少GIが小麦ビスケットより低い値、51対68を示した。同様にfoxtail-millet
-小麦合成パンは多少GIが小麦ビスケットより低いと示された。クロスオーバー無作為臨床試験を用いてfoxtail millet -小麦合成ビスケットとfoxtail millet -ひよこ豆合成スイート(バルフィ)がタイプ2の糖尿病患者に試験された。とりわけ両foxtail millet製品は血清グルコース、コレステロール、低--密度リポプロテイン(LDL)、 グルコシルヘモグロビンの顕著な低下と高密度リポプロテイン(GDL)の増加を示した。Pearl millet に関しては、スーダンの研究でタイプ2糖尿病を持つ患者でいろいろな伝統的食事をとるものは、pearl milletsのかゆと小麦パンケーキは最も低いグルコースとインスリン応答を示した一方、トウモロコシかゆは最も高い値を示した。極小ヒエの僅かに出版された仕事がある。1つだけの研究だが、健全者とタイプ2糖尿病患者が脱皮しローストしたbarnyard milletで作った食品を食べた。28日のトライアルで、両グループは僅かに血清グルコース、トリグリセリドの低下とHDLの増加を示した。しかしながらその仕事は、本質的にはローストしたbarnyard millet のGIの低下を示した。これは加工で抵抗デンプンが生じ、多分barnyard milletの特異的品質ではない。
最近の研究から、伝統的アフリカ食品製品のpearl milletやモロコシから作られたものは、西側穀物食品製品よりもずっとゆっくりの胃空を示すというはっきりした証拠が示された。Maliの農村で行われた研究で、健康被験者がモロコシとpearl millet で作った濃いお粥とpearl millet、 白米、小麦パスタ、調理ポテト等で作ったクスクスを食べた。13C-ラベルオクタン酸呼気検査法を用いて、全てモロコシとpearl millet で作った食品は他の食品に比べて胃排出の半量(約5時間)にかかる時間が約2倍であった。やや不思議なことには被験者の示す被験データーは、白米とpearl milletのクスクスミールが他の穀物よりも高い膨満感と低い空腹スコアのあったことだ。
疑いもなくフェノール植物化学物質はヒエにより観察された抗糖尿病関連効果にかなり関係があった。Shobana et al.,(2009)は、finger millet 種子膜からの抽出物にフェノール物質の関連範囲が多く、単純フェノール、アントシアン、タンニンが含まれ、α--グルコシダーゼやα--アミラーゼの強力なインヒビターであり、殆どのヒトデンプン分解酵素の阻害剤で有る。類似の結果はフェノールリッチ抽出物のbarnyard , foxtail,proso milletsから得られた。またヒエ中のフェノール類はより微妙な効果を示したが、それは多分抗酸化活性に関係あることであった。ラットの研究で、finger millet種子膜はレンズアルドースレダクターゼ活性を低下し、血清の高度な糖化の低下、グルコシル化へのヘモグロビンレベルの低下、更に白内障の発生の低下を示した。これらは全て血清グルコースータンパク質反応の低下した指標である。更にテストグループは腎臓損傷の多少の逆転を示した。
他の仕事では、ラットの研究でfoxtail
milletの水溶性抽出物の強い抗血糖効果も観察された。同様にマウスモデルを使いwhite fonio
flourは米粉に比べてインシュリン抵抗性を改良することもわかった。Fonioは炎症性サイトカインを低下することにより糖尿病の重症度を修正することが出来るだろう。しかしながらこれらの研究ではその効果がフェノール類によるものかどうかははっきりしてない。
6.2
抗炎症性およびCVD(cardiovascular disease=循環器疾患)阻止効果
全粒食品、そこにはヒエも含まれるが、これらの取り込みは、CVDを含むひどい病気危険性要因と病気の結果と逆に関連づく事が実証済みである。残念なことにヒエの役割に関する特異的データーは、とくにCVD に結びつく危険因子改善に関しては不足している。Lee et al., (2010)は、ラット高脂肪食の餌中、白米に対する全粒foxtail millet、proso millet、モロコシの効果を調べた。血清中トリグリセリドレベルは、foxtail、 proso milletグループ中のものはモロコシや白米グループに比べて低かった。
しかしながらC-反応性タンパク質レベル(炎症のマーカー)は、明らかにfinger millet グループだけのものが低かった。マウスモデルを用いて、Parker et al., (2011)は、proso millet の水抽出物(多分水溶性フェノール物質を含む)は血清トリグリセリドレベル、肝臓脂質蓄積、全コレステロールを低下させた。その効果は肝臓の脂質生成調整に関係があり、更に脂肪分解遺伝子発現、サイトカイン、ケモカイン遊離の阻害に関係あるという証拠はあった。Choi et al., (2005) は、foxtail millet タンパク質が本質的にHDL-コレステロール増加、アジポネクチンレベルの増加をカゼインのコントロールに比べマウスモデルで起こすことを見い出した。アジポネクチンは脂質分解の調整に関わるが、彼らはタンパク質がその濃度を増加するのに取り込まれると推測した。同様にShimanuki et al., (2006)は、proso milletから濃縮されたタンパク質がラットモデルで血漿 HDLをあげることを見い出した。これらの発見の中で、Lee et al., (2010)は、モロコシがCVDの脂質マーカーを増加するのを見つけたので、ヒエのCDVマーカーへのポジテブな効果はフェノール類による第1のものではないようだ。
6.3
抗ガン効果
どんな特異的データーもないが、しかし状況証拠ながらヒエ消費はガン防御に対するものである。しかしながらいくつかの研究からヒエからのフェノール抽出物は強力な抗酸化活性のあることが示された。間違いなくChandrasekara and Shahide(2012)はヒエの5種(finger, foxtail, kodo, pearl, proso)を研究し、類似の消化が本質的に増加した抗酸化活性を示すことを酸素ラジカル吸収能(ORAC)、DPPH (1,1-diphenyl-2-picryl-hydrazyl
radical scavenging activity)とhydoxyl radical scavenging
activityアッセーで調べた。高抗酸化活性は又、white fonio、Japanese barnyard millet、little milletとteff中のフェノール物質と結びついた。
フリーラジカルによるDNAの酸化的ダメージは、ガンの原因と同定された。Chandrasekara and Shahidi (2011c)は、脂質過酸化物の阻害、DNA分裂の阻害、大腸ガン細胞の増殖の阻害を6種のヒエ(finger, foxtail,
kodo,little,pearl, proso)からの全粒抽出物により研究した。全てのヒエ種はリポゾーム中に強力なリピド阻害、一重項酸素消去、DNA分裂のある阻害を示した。更に、ヒエ抽出物は大腸ガン細胞増殖阻止し、kodo、 pearl millet
抽出物では100%まで阻害した。著者らはヒエフェノール類はガン開始と進行を効果的に阻害するだろうと結論した。
6.4,
プレバイオテック、プロバイオテック効果
プレバイオテックは食物繊維の1つのタイプであり、それは発酵されまた選択的に結腸中バクテリアの特異的タイプのものの生長を刺激し、人ホストに有益である。プロバイオテックスはバクテリアであり、ヒトホストに価値があるものであり、消化管中にもともといる微生物集団中の健康バランスを促進あるいはサポートする。Foxtail milletとpearl
millet の両方からの食物繊維区分は、いくつかのプロバイオテックバクテリアLactobacillus
acidophilus, Lactobacillus rhammosis, Bifidobacterium bifidum, Bifidobacterium
longumの特別の基質であるとわかった。繊維区分の発酵の間、これらのバクテリアは短鎖脂肪酸アセテート、プロピオン酸塩を作り、それら自身よく知られた重要な胃腸健康促進に寄与するものである。
発酵したヒエ製品に関し、Lactobacillus
fermentum株はブルキナファソのpearl milletかゆのben-saalgaから分離されたもので、プロバイオテックの可能性が見出され、それらは胆汁酸塩耐性と低pH耐性能の両方と結びつく遺伝子を有するものであるとわかった
。またガーナの発酵pearl milletドウから分離したイースト種は胃腸細胞バリアー能の改良面でプロバイオテックの性質を示した。いくつかの研究は、伝統的発酵ヒエ食品と関係あるバクテリアが、バクテリオシン、抗菌タンパク質を作ることの出来ることを示した。Enterococcus
faeciumの1種は、発酵したfinger millet食品、インドのクーズから分離されたもので、バクテリオシンを生産し食物由来の病原体の生長を阻害する。しかしながら今日までこの様な伝統的発酵ヒエ食品が実際に胃腸健康を改良して進めたというはっきりした証拠はなく、しかしそれらはプロバイオテックバクテリアを含んでいる事実はある。
7. 結論と未来方向
7.1 ヒエの栄養的健康増進面
一般的な巨大、微小栄養成分に関して正しいはっきりした証拠はないが、ヒエ種のあるものは栄養素の点で本当に例外的であるという括弧たる証拠はない。問題は我々が十分な基本データーをいろいろなヒエ品種の成分で持たないことだ。最も最近のUSDA National Nutrient Database食品リストは、正に6ヒエ製品に関しデーターを示した:ヒエ材料;ヒエ料理;ヒエ粉;teff未調理とteff調理(USDA, 2014)。特に、ヒエ種の名前は述べられてない。更に述べられてないのは、そのデーターが全粒に対するものなのか、あるいは精製した粒製品なのかである。明らかにヒエとそれらの食品製品に関する基本的な栄養データーがより必要である。
健康--促進性質に関する件で,いくつかの研究(全てではない)はヒエ食品(伝統的あるいは近代)が低い血糖応答で、西欧タイプの食品より伝統的ヒエ食品の方が本質的には胃排出になるのがゆっくりであることを明らかにした。しかしながら鍵になる疑問点でいまだ答えが必要なものは、ヒエ食品のより低いGIと胃空腹の発見がヒエと他の穀物間の粒成分と構造の本質的な違いによるものなのか、あるいは加工に関する違いによるものかどうかである。例えば、全粒あるいはわずかに精製した穀物製品は、より高レベルの非デンプン性多糖、脂質、ビタミンB、ある種のミネラル、フィチン酸、特にフラボノイドータイプのフェノール類というものを穀物の種とは無関係でより高度に精製した穀物よりも含むだろう。更に穀物食品中デンプン利用性に大きく影響するものにいくつかの食品加工要因があるが、特に粒の粒径、熱と剪断加工処理および食品仕出し時の温度が有る。
これらのことにも関わらずこの著者の意見としては、一般にヒエ中のフラボノイドータイプフェノール類の高レベルは大部分の穀物に比べ、ヒエ食品の一般的消費がある非伝染性疾患、特にタイプ2糖尿病やCVDのような病気の進み方に対し何か防御に貢献するようである。しかしながら生体中で慢性的必要性があり、臨床研究が必要であり、そこでは直接的に他の穀物で作った同等の食品との比較研究であり、それは成分の面で粒と食品製品が比較するのにずっと良い特徴を持つものであることだ。もっと基本的レベルで、食品製品自体(抽出物ではなく)からのフェノール類の生化学的利用性と、特別のフェノール成分の生理的作用はより完全にずっと解明される必要がある。
7.2 ヒエの主食と特別食品、これからの予想
これまで見てきたように、ヒエは多くのポジテブなものを持つ。それらは厳しい天候条件下での栽培によく適応するが、それは他の殆どの穀物以上のものであり、農業への天候の変化の影響の結果、世界中の安全な食品になる大きな可能性がある。それらは多くの発展途上国の伝統的食物文化に重要な役割を演じ続けている。それらはグルテンフリーであり、制限はあるが明らかなことはそれらは所謂西側ライフスタイルの病気に対して抵抗的である。こうして発展途上国での大部分の主食として、そして発展国では日常食品としてのヒエの見通しは素晴らしいものがある。しかしながらヒエとそれらの食品にはまた対処すべき欠点もある。ヒエ食品と飲料には大部分の穀物のものより一般に強いフレーバーがある。これがほぼ確かなのは、より高いレベルのフラボノイドタイプのフェノール類のためである。これらを現代の小麦、米、品種では改良して育てた。こうしてヒエ栽培者、食品科学者、栄養学者、食品製造者らの挑戦は、ヒエとその製品の美味しさの改良であり;しかしながら同時にこれらの健康--促進植物化学の機能保持であった。
もう1つの挑戦は、ヒエが一般に大部分の穀物よりずっと高価で有る点である。例えば著者の地方スーパーマーケットのfoxtail millet riceは、レギュラー米のコストの3倍の値段である。こうして発展途上国では迅速な人口増加し、彼らは食事を(持久農家とは対照的に)購入し一般に大部分の穀物粒を消費する。同様に西欧諸国ではヒエ食品は殆ど高収入の人々によってほぼ独占的に消費される。ヒエ製品に対する要求が本質的に増加するなら価格差はかなり軽減される。これは育種家に大きな刺激を与え、品種改良と農家に栽培収益の増加をさせ、それにより収量を増加させる。またより大きなスケールの経済力は食物価値連鎖に用いられる。
恐らくヒエや他の古代穀物に対し増える要望を支持する一般的ニーズの最も緊急な場面は、国際的に受け入れられている grain-quality management systemの成長することである。ヒエ--特異的品質の管理システムは、ヒエ扱い効率を改良し、商品としてのヒエの品質を改良し、そして食品や飲料への応用のヒエ品質の世界貿易を促進するであろう。